希望へのバトン
minmin24さんからのバトンです。
「将来を担う子供達、それを見守る親への希望を...」
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ムコ多糖症ってどんな病気なのですか?
体内で作られるある種の物質を酵素の働きで分解・排出することを「代謝」といいます。生まれつき体の中で酵素が作られなかったり、少なかったりすることで、この「代謝」がうまく出来ないために色々な傷害を引き起こす病気のことを、「ライソゾーム病」と呼んでいます。
小児難病「ムコ多糖症」は、このライソゾーム病の1種で、遺伝子の異常により、体の中の代謝物質「ムコ多糖」を分解する酵素がないために、「ムコ多糖」が体中に溜まっていくことで、様々な障害を引き起こす病気です。
このため、
「ムコ多糖症」は日々、症状が進行していく病気です。溜まっていく「ムコ多糖」は様々な臓器に障害を起こし、結果的に徐々に衰弱していき、知能障害・運動能力・聴力の喪失と呼吸困難などを伴い早期に亡くなられます。病気の重篤度と症状は個々の患者によって違いますが、ほとんどの患者の寿命は通常10歳から15歳までぐらいです。
つい数年前までは、ムコ多糖症の治療は骨髄移植という方法しかありませんでした。骨髄移植は、拒絶反応などの副作用を伴うため、移植を受けた患者さんの中には治療経過中に亡くなられる方もいました。
最近になり新しい、安全な治療法が開発され、欧米で認可され始めました。それは「酵素補充療法」という治療法で、体の中に足りない酵素を点滴で投与することで、細胞の中に溜まった「ムコ多糖」を分解する、という治療です。これにより、それぞれの臓器を正常な状態に戻したり、またはそれ以上の病気の悪化を防ぐ、という治療が期待できるようになりました。
7つの型に分けられるこの病気のうち、ムコ多糖症1型とムコ多糖症6型は、すでに欧米で酵素補充療法が認可され、その治療効果が報告されています。ムコ多糖症II型(ハンター病)の治療薬は現在アメリカで承認審査が進められています。この治療薬の開発のために、当時5歳だった中井耀君をはじめ4人の日本人患者がアメリカに渡り、1年半の臨床治験という薬の効果安全試験に参加されました。患者さんたちが心待ちにしているこの薬は、2006年中に欧米で認可される見通しです。日本においてもこれらのムコ多糖症の薬の早期の認可が望まれております(図1)。
「ムコ多糖症」は進行性の病気で、病状は後戻りしません。日本での治療薬承認が遅れれば遅れるほど、患者さんは苦しむことになり、中には治療が間に合わない患者さんが出てくることにもなりかねません。
ムコ多糖症は、グループとして見るなら、50,000人の新生児のうちに1人発生すると推測されます(岐阜大学調べ;図2)。 岐阜大学では過去20年間に約400人のムコ多糖症患者を診断しました。ですから毎年20名前後の新しいムコ多糖症の患者さんが生まれてくると推測されます。
生まれて直ぐの時期にだと、ムコ多糖症の赤ちゃんは
外見上まったく正常に見えるため、乳児期にムコ多糖症を診断することは
非常に困難です。
しかし、体内では1日1日とムコ多糖が蓄積して各臓器に不可逆性の変化を生じさせています。新生児期における診断と治療は、後戻りすることのない体の障害を防ぐのを助けることにつながり、症状を軽減したり、様々なリスクを未然に防ぐことにつながります(図3)。
現在、島根大学とアメリカのセントルイス大学では、産まれてすぐの赤ちゃんがムコ多糖症かどうかの診断ができるようにするための検査技術の開発を進めています。「新生児スクリーニング」と呼ばれる検査方法は、ムコ多糖症をはじめ、様々な小児難病の早期発見を実現する技術です。もし、ムコ多糖症の治療薬が日本で承認された場合、次に必要になるのは、患者の早期発見、早期の治療開始です。様々な障害が出る前の、新生児期における治療の開始は、患者に最大限の治療効果をもたらすものと期待されています。
多くの医師や患者家族にとってムコ多糖症との出会いは偶然かもしれません。医師や患者の皆さんが病気を知り,病気に挑戦し、またムコ多糖症の最も一般的な症状の組み合わせに慣れておくことが望まれます。それがより多くの患者の早期診断につながり、適切な治療の提供と後戻りできない障害を未然に防ぐことを可能にします。新生児スクリーニングの開発はその中でも中核をなすものです。ムコ多糖症患者ひとりひとりが最大の医療の恩恵を受けられるように願っています。
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